『虐殺器官』を読んでみた

先日の飲み会で、表現の限界とか言葉の虚しさとか、そんな話題の一角にSFに関する話題に移りかけたときに、ツレの紹介で出会った本だった。

伊藤計劃さんのことはそれまで全然知らない存在だった。興味を持ったのでその場で調べてみると既に他界されているとのこと。その原因が自分の置かれている状況と少しだけリンクしていたことから心惹かれてアマゾンに発注。

SF小説との分類をされているようだが、個人的にはエッセイに近いような感覚を覚えた。日ごろから自身が考えていた思考を表したとするならば、どちらも本質的な差異はないかもしれない。純粋に文学を志向した作品とは感じられ無かった。

 

印象深かった部分は多々あるが、もっとも強かったのはキャラクターが発したセリフの中で「仕事とは宗教~」という表現に出会ったことだった。この一文には唸らされた。

まだ働いていたころ、どこの会社にでもあったであろう仕事談議が、私の周りでもアフター5の時間を中心に存在した。個人的には仕事なんてメシを食うための道具としか考えていなかった私はあらゆる意見に対して「なるほどね」と答えてきたが、基本ノンポリだった(やや誤用)ため、アツク語る皆様のことを「みんな真面目だなぁ」と捉えていた。様々な意見を主張し合うその世界は、今から思えば皆さん自分の宗教観を戦わせていたのかと納得できる。基本的に自分の意見を主張するだけで他者の意見との統合を目指さないその姿勢は、現在入手できる情報からうかがい知ることのできる世界との差がないように感じた。

本書のストーリーとは関係ないところで惹かれたが、内容はとても面白かったので他作も読んでみようと思う。

『すべての教育は「洗脳」である』を読んでみた

電車に乗るのに本を持ってくるのを忘れたので、たまたま見つけた駅構内の本屋に立ち寄ってみた。

物色していると何やら刺激的なタイトルが目につき、手にしてみると堀江貴文さんの著作だった。

過去に何冊か堀江さんの本は読んだことがあり、面白かったので購入を決定。

読んでみて感じたことを何点か忘備録として残してみる。

 

1.国の体制を批判なり指摘することで、また逮捕されるなんてことはないのかなぁなんて他人事ながら心配してしまった。タイトルの根拠としての論理展開は見事だけれど、これって多くの人が「思っていても口にしないこと」だったりして、その辺の歯に衣着せぬ物言いに憧れを感じる。きっと堀江さんにしてみれば危機感があって、誰かが言わなければという使命を感じているのかもしれないけれど、すごいなぁと感嘆しきり。内容的にはタイトルに関する論考から、読者への応援歌に移っていくので、タイトルのインパクトは書籍を売るためのものかとも感じた。

 

2.一番感じたことは堀江さんにとって所属意識が希薄もしくは無いということ。恐らくグループに入ることよりグループを作るタイプなのかな。たぶん何かにおもねるなんてことはないんだろうなぁと、この点も憧れる。

 

3.本書の主旨としては、独立した個人へのなり方の手引き的なところがあって、これは現在進められている「働き方改革」の一部に通じるところがあると思う。働き方の多様性の確保について、個人的には非常に同意しているのだけれど、これって所属意識の低下を誘うものであって、本書が指摘している国が求める国民像とは違っているのではと気づかされた。まぁ厚労省文科省で分野が違うからいいのか。